シエルは私から体を離すと少し驚いた顔で私の顔を覗き込んだ。


「本当に、いいのか?」


笑って頷くと、涙がツーっと頬を伝って流れた。

シエルに両手で頬を包み込まれ、私たちは見つめ合った。キラキラと輝く金色の熱を帯びた瞳はとても綺麗だった。


「ルカ、愛してる。」

「私も愛、してる……。」


想っている事なのに、実際口にすると少し照れくさかった。

好きな人と気持ちが通じ合う事って、こんなに幸せな事なんだね。胸の奥がポカポカする。

それでもどれだけ幸せを感じても、切なさを拭う事はできなかった。だってこの恋にはタイムリミットがある。

私は人間で寿命がある。それにシエルは純血の王子様で、それ相応の人と結婚しなければいけない。身体のつくりも、身分も違う。好きな気持ちにそんな事関係ないけど、好きでいる限りそれらは付いて回る。

シエルの胸に頬を寄せ、背中に回した腕に力を込めた。

今だけは先の事を考えるのは止めよう。そう、今だけは……。

この幸せを純粋に感じていたいから……。

抱き合っている最中、時折り頭を撫でてくれるシエルの手が私の幸福感を更に大きくした。