鏡の中でユラユラと揺れている黒いフードの人。怖いのに目が逸らせなかった。


「っ!? あ、あ……っ!」


鏡の中から手が伸びてきて、腕を力いっぱい掴まれた。こんなこと現実であり得るわけないのに、掴まれた腕は痛かった。


「ヤ、ヤダ!! 離してよっ!!」

「大丈夫。 何も怖くないよ。 君はこちら側の住人なんだから。」

「何、言ってるの!? いやぁぁぁぁ!!」


必死の抵抗も空しく、引っ張られるまま体が引きずられた。鏡が目の前に迫り、咄嗟に目をギュッと瞑った。けど一向に訪れない痛みが逆に不安を煽り、恐る恐る目を開けた。

何!? ここ……。

真っ暗な中、私の腕を掴む手だけがしっかり見えていた。

まさか……まさかだけど……鏡の中とか言わないよね!? 誰か助けてっ!!


「っ!?」


突然首に付けていたネックレスが光り、眩しさに目を細めた。気付けば掌が目の前まで迫ってきていて、顔を背けた。

いっ……!!

首にちくりと痛みが走り、ネックレスが千切られた事に気付いた。取り返そうと慌てて手を伸ばすけど全然届かなくて、そうこうしている内に光は強くなり、私の意識は少しずつ遠のいていった。