ある晩、自室に戻ると部屋の明かりは消えていた。

ルカのベッドルームにつながるドアを開けると、規則正しい寝息が聞こえてきた。ベッドに腰かけ、ルカの頬にそっと触れた。

温かい。

俺たちヴァンパイアはこの温もりを持ち合わせていない。いつも体はひんやり冷たく、生きれば生きる程、体同様心までもひんやりとしていく気がする。それでも俺はローズと出会って、心が温かくなるという事を知った。その感覚を忘れかけていた頃にルカと出会った。

カナリアに言われた事が頭の中をグルグルと回っている。

俺はルカに惹かれている。手放したくない。今度は喪ってしまわない様に、ずっと傍においておきたい。そう思うが、それはローズの姿をただ重ねてしまっているだけなのかもしれないと思う時がある。

それに俺は純血のヴァンパイアでルカは人間。混血のヴァンパイアだとしても周りから反対されるというのに、人間となれば両親も重役どもも誰一人として賛成はしないだろう。

それにルカは俺と一緒に居る事ではなく、元の世界に戻る事を望んでいる。

そんなルカに俺の気持ちを押し付け、辛い思いの中閉じ込めておくのか?……ここ最近は同じような事で自問自答を繰り返している。答えはいっこうに出る気配がない。

気持ちよさそうに眠るルカの額に唇を落とした。


「ルカ、好きだ……。」


愛に変わる前にお前を手放すべきだろうか?

こんなに俺を悩ませておいてお前は気持ちよさそうに眠っている。その愛らしい寝顔が憎らしく思えるよ。