「純血は死なないし病気とも無縁なんだね。」

「……そうでもない。」


湖を見つめるシエルの目が一瞬悲しそうな目になった。今だけじゃない。たまに悲しそうな目をする時がある。でも触れてはいけない気がして、いつも気付かないふりをする。


「暗くなってしまう前に戻ろう。」

「うん。」


さっきの悲しそうな顔が嘘の様に、今は微笑んでいるシエル。

いつか話してくれるだろうか。何をそんなに悲しんでいるのか。

私たちはお城へ戻り、久しぶりに一緒に夕食を食べた。シエルと一緒に食事をするのは数えるほどしかない。

純血のヴァンパイアにとって本来の食事は吸血で、ご飯を食べるのは娯楽の様なものなんだとか。食べる必要はないけど食べ物を美味しいとは思うらしい。

混血のヴァンパイアは純血とは違い人間の血も流れているから、吸血と食べ物の両方が必要らしい。

私は人間で吸血は必要ないけど、ご飯を食べないと死んでしまう。そんな私に合わせて一緒に食事をとってくれるシエルの優しさが嬉しかった。

シエルの優しさに触れる度、頑張って押し殺している好きという感情が溢れ出そうになる。この気持ちをいつまで抑え込んでいられるか、正直不安だった。