眠れないくらい寂しい時はシエルの帰りをダイニングで待っている。誰かに「おやすみ。」と言って眠りにつくのと言わないで眠りにつくのとでは、驚くほど寝つきが違う。

今まで「おやすみ。」や「おはよう。」という挨拶が出来る事を当たり前だと思っていたから深くは考えた事はなかったけど、言える相手がいるというのは幸せな事なんだと思った。

天井をボーっと見つめながら、今日ラキと話した事を思い出していた。

お城で働いている人たちは基本はお家に帰る事を許されていないという事。けど位の高い人はある程度融通がきくらしい。

ただ、月に一度だけ家族との面会が許されているらしく、ラキには毎月妹さんが会いに来てくれている。その時にお給料を妹さんに渡している。家族の為に働いているのに自由に家族に会えないなんて、寂し過ぎる。

お城の中の情報漏洩を防ぐためらしいが、そんなの私には寂し過ぎて無理かもしれないと思った。

シエルたちに守られながらの生活をしているくせに、何不自由ない生活をさせてもらってるくせに、私は家に帰りたくてしょうがない。

_コンコンコン。


「……はい。」


ベッドから起き上がると、ドアが開きシエルが入ってきた。


「起こしたか?」

「ううん。 どうしたの?」

「いや、ちゃんと眠れているのか気になっただけだ。」


シエルは出会ったばかりの頃の様な怖い顔をしなくなった。接する時間はあまり長くはないけれど、それでも分かった事がある。分かり辛いけどシエルは思い遣りのある人。


「心配してくれてありがとう。」

「ただの気まぐれだ。 もう寝ろ。 おやすみ。」

「おやすみなさい。」


笑ってそう言うと、シエルも微笑み部屋を出て行った。

私はベッドに潜り、目を閉じた。その日は中々寝付けなかった筈なのに、考える間もなく私は眠りについた。