この世界に来て数日が過ぎた。

首の傷も瘡蓋(かさぶた)になり、だいぶ良くなった。

寝る場所も食事も着るものも、生活に必要なものは全て用意してくれる。

シエルとジョシュさんは毎日忙しそうで、一人で居る事が多い。今も一人で昼食を食べている。広い部屋、大きなテーブル、静かな空間、それらが余計に寂しさを大きくする。

ジョシュさんとはあの後も一度だけゆっくり話す機会があり、その時にまた少しだけここの事を聞けた。

国王陛下はご健在だけど、この国の行政を取りまとめているのはシエルなんだとか、ジョシュさんはシエルの補佐を務める右腕的存在で、騎士団に稽古をつけるくらい剣術と武術に長けているとか、ちょっとした話を聞くことができた。

そんな話を聞いても私には関係のない事かもしれないけど、知らないよりは知っておきたかった。

_コンコンコン。


「っ……。」


ドアがノックされ、思わず声を出しそうになり慌てて声を飲み込んだ。

シエルからは相手が誰か分かるまで声を出すなと言われている。


「俺だ。」


_シエル? こんな時間に戻ってくるなんて珍しい。


「どうぞ。」


返事をするとドアが開き、いつもの堂々とした姿のシエルが部屋に入ってきた。その後ろには見た事のないメイドさんが立っていた。