シエルの言っている意味が分からなかった。助けを求める様にジョシュさんを見ると、真剣な表情で見つめられた。


「ルカ、君の言っているニホンやジャパンという国はこの世界に存在しないんだよ。」


何言ってるの?


「そんなわけないです!! 私は日本で生まれ育ったんですよ!? それに日本がないって……っ、そんな簡単に国がなくなるわけないじゃないですか!! 冗談は止めて下さい!!」


ジョシュさんは興奮する私の肩に触れ、口を開いた。


「ルカの居た世界は人間が統制している世界?」

「人間が統制……? え? 意味が、分からないんですけど……。」


統制ってまとめてるとか、そういう事だよね?人種は違ってもみんな人間でしょ?他に何があるの?


「この世界を支配し統制しているのは人間ではなく、ヴァンパイアだよ。」


ヴァンパイアって……さっきもそんな事言ってたけど、それはただからかってただけでしょう?


「もう、止めて下さい……そんな空想上の生き物が居るわけないじゃないですか! 私は人間です!! ジョシュさんもシエルも人間でしょ!?」

「信じてもらいたいとは思わないが、いつまでも騒がれると面倒だ。 その目で見てさっさと現実を受け入れろ。」


シエルは私の顔を両手で挟むと、口を小さく開いた。すると信じられない事にみるみるうちに二本の牙が生えてきた。フッと眩暈に襲われ、私はそのまま意識を手放した。