幸せ行きのチケット

並木君はびっくりしている。

多分、意味が分からなかったのだろう。

でも私の答えは決まっていた。

並木君に言った『ごめん』は、『この指輪は受け取れません』という意味。

それを理解したのか、並木君の笑顔は徐々に消えていく。

「なんで?」

「……ごめん。」

「指輪が安いから?俺がなんかしたから?……元カレ…のことか?」

私はゆっくりと頷いた。

並木君の目からは涙がこぼれ落ちた。

私は指輪をはずし、並木君に渡した。

「ごめん。……私にはあの人しか…」

「分かってた…。」

「え?」

並木君の言葉に驚かされる。

「分かってたけど、……………俺、友利といられて楽しかったよ。」

私は涙をこらえきれなかった。

並木君の声は、とても悲しげな声だった。

「また会えた時はもっとカッコよくなって、ほっておけねぇぐらいの最高の男になってやるからな。」

「……………。」

「…………さよなら、先輩……。」

それからずっと、私の涙は止まることがなかった。