「ねぇ、私たち両想いだよね?
なんでそんなに逃げるの?」
「は、離せよ!」
「恋に障害はつきもの!
あなたが逃げる度に私の心は高鳴るの!」
「やめろぉぉ!」
私の手を振りほどこうとする男子。
必死に手を振っているけど、怪力の私にとってはそんなもの関係ない。
とにかく、この男子の事が好きなのだ。
「あなただって私の事好きでしょ?
だって、私の事を見て微笑んだじゃない!」
「愛想笑いだ!
誰がお前なんか好きになるか!」
廊下で繰り広げられる会話。
他の生徒はもう慣れっこらしい。
視界にも入っていないのか、普通に昼休憩を楽しんでいる。
「照れなくていいのに!
あ、もしかして、ツ、ン、デ、レ?」
「う、うわあぁぁ!」
男子のその大きな声に驚いて、私は手の力を緩めてしまった。
しまった!
そう思ったときにはもう遅かった。
男子は怯えた表情をして、走り去って行ってしまった。
その姿を私は黙って見る。
逃げられたらもう興味ない。
「かーえろ。」
何事もなかったように、私は教室へと戻っていった。