あれから五年、再会の約束は果たされぬまま少女は住まいを王宮の離れから城下の木造二階建ての庶民的な家に移していた。




現在時刻は午前7時30分と平日の起床時間にしては少し遅め。
にも関わらず白に近いプラチナブロンドの髪をした少女は未だに自室のベッドの上ですやすやと寝息をたてている。

そんな少女の自室に深い緑の瞳の黒髪の青年が入ってくる。
少女よりいくつか年上に見えるその青年は少女が眠るベッドの横まで行くと大きく息を吸い、枕元で大声を出す。


「起きろソフィア!!学校に遅れるぞ!!」

ソフィアの大きすぎず小さ過ぎない部屋に青年の怒号が響き渡る。
これに驚かないわけがない。
朝の弱いソフィアでも流石に目を開き、ベッドから飛び起きる。

「ひゃあ!!………び、びっくりした……お、おはようチェル兄」

チェル兄もといチェルノは呆れたように息を吐き促すように言う。

「ほら、もう直ぐルルアちゃんたちが迎えにくる時間だろ?早く準備して朝食食べな。あの父さんでさえもう起きてるよ。」


父親に“あの”とか“でさえ”とか付けるのはどうなんだと思ったりもしたがそう言いたくなる気持ちはソフィアも理解できるためあえて何も言わずに支度を始める。