ドロップアウト




その日の魔法実技の時間、まず基本的な魔法の認識が違うのではないかと考えたソフィアは初等部の魔法基礎の本を読んでいた。


「『魔法は火、水、風、地の四属性に分かれていて通常は一つ、稀に二つの属性を使える者もいるがそれ以上の数を使える者はいない。』……ってー。こんなの誰でも知ってる常識だよ…。」


大きなため息をついて本を閉じ、元あった場所へ戻すために椅子から立ち上がる。



本を戻すとソフィアはまた別の本を探し始める。
すると本棚の一番右上にあった薄汚れた本に目が止まる。


「あんな本あったっけ?」


二ヶ月間の魔法実技の授業時、いつもここで本を読んでいるソフィアだったがそんな本は見たことがなかった。


呟きながらも椅子を持ってきてその下に置き、上に乗って薄汚れた本を手に取る。

その表紙には“四精霊の伝説”とだけ書かれていた。
だが不思議とその文字にソフィアの目は釘付けになっていた。



パラパラとめくってみるとその本は四元素に宿る四精霊が一人の人間とともに崩壊した世界を救うと言う小説だった。
だがソフィアは作者名がかかれていないことに疑問を感じた。


表紙は薄汚れていたが、題名ははっきりと見ることが出来た。だが表紙に書かれているであろう作者名はどこにも見当たらなかった。
最初は汚れて見えなくなったのだろうと思っていたが冷静になって考えるとおかしい。


ふつうの小説には必ずあとがきがあり、そこにも作者名が明記されているはずなのだが、この本にはあとがきもない。



数々の疑問の中ソフィアはその本に読みふけっていった。