振り払われた手を見つめて那智は拳を作った。殴られると俺は思って目を閉じた。
「繋いでおく理由なんか俺にはない」
今までと違う悲しげな声に俺はそっと目をあけると、拳は微妙に振るえ、さっきと同じ場所に存在していた。
「理由…理由ならあるじゃんか!好きなんだろ?向日葵が…。十分な理由だろ?
俺に、俺に取られたくないなら繋いでおけよ!俺を巻き込むな!」
喋っていくとどんどんヒートアップして最後は叫んでいた。言い終わって自分の言葉にハっとなって俺はすぐに那智の前から逃げた。
…いまごろ、ケンジが俺を探しているだろうな…
ケイが、ケンジ一人の姿を見て心配してんだろうな…
きっと、もう向日葵には会わないんだろうな
もし何処かで会っても、もう言葉を交わすことはないんだ…あの笑顔も見れなくなるんだろうな…
今までに戻るんだろうな…

