「龍…好きだよ」
震えた向日葵の声が胸を締め付けた。それを振り払うように俺はノブをひねった。
「…っ」
ギュっと背後から抱きつかれた俺はそのままノブから手を離した。いつになく必死な力は俺をこの部屋から出させようとはしない。
「なっちゃんは関係ない!俺のそばから離れるなよ…俺のそばにいろよ!お願いだから…そばにいて。俺のもんになって…」
…『ケイが、向日葵くんに意地悪な事言ったから…謝っておいて』
『龍は俺のもんだってね!』
ケンジの言っていたことが頭を駆け巡った。俺はそれまで我慢していたのにあっさりと振り返り向日葵を見つめた。そこには男なのに、目を真っ赤にして頬も涙でぐしょぐしょになっていて、でもその顔が可愛いとも思えてしまった。
「龍?」
「俺は、誰とも付き合ってないし…ケイとはそんなんじゃない。だから、張り合わなくたっていい…俺は、誰のものでもないから」
そう言って向日葵を突き放すと俺はすぐに部屋を跳び出て行った。扉が閉まる音がなるまでは決して振り返ってはいけない…
どんなに好きでも…俺の今の気持ちはきっと何かの間違いだ…
俺は男で、向日葵も男。ケイだって男…、一瞬の気の迷いで好きだなんて言ったらいつか傷つけてしまう。
きっとこの想いは、すぐに消えるから

