◆プロローグ


 黒崎伊織(くろさき いおり)の今まで人生を表すのなら『順風満帆』が最も相応しいだろう。

 容姿端麗・成績優秀・運動神経抜群。

 多少俺様傾向はあるものの、人柄も申し分なく、面倒見も良いこともあって同学年の男女は元より、上級生や下級生、先生やご近所さんの覚えも良くご町内のスーパースター的存在。

 順風満帆の帆の他に、色彩豊かな大漁旗を豪勢にはためかせたような人生だったのである。
 




 ……お気付きだろうか? 


 彼を紹介する言葉が過去形であることに。

 そう、今日の高校入学式が彼の人生の大転換期。

 ――今日を境に、彼の人生は波瀾万丈のときを迎えることになるのだ。