あの場所に、もう一度。

何かが崩れていく感じがした。積み上げて来たものが、一気に崩れていく感覚。



「…本当に転んだだけならこんな怪我、しませんよ。背中を打つなんて。突き落と、された、のではありませんか?」



この、優しい女医さんがかけた一言で、

突き落とされた恐怖、悲しみ、もう、バスケを本気で出来ないかもしれない、という悔しさ、親友だと思い込んでいたマヤ。



溢れるばかりの負の感情が頭の中をぐるぐるまわる。



そして、たった一滴だけの涙が、こぼれ落ちてきた。



涙が出たあと、何故か頭の中がすぅーっとなった。



一瞬で整理することができた。



『何かを信じる事を辞めてしまえばいい。』

『一生懸命にならなければこんな事にはならない。』



 『バスケをしなければ、
    こんな事にはならなかった。』



そうだ。

もう、何かを頑張るのを辞めよう。

夢を追いかけるのを辞めよう。

何かを信じるのを辞めよう。



そう思った瞬間だった。