学校が終わると、真っ先に玄関へ。
夏海に逃げられては困る。

だいぶ遅れてくる夏海。
「遅い。」

仲直りと言っても、何から話すべきか。

考えていると、

夏海が急に、俺の手にある“傘”のことを聞いてきた。
この天気の中、傘を持ち歩いてるヤツなど俺くらいだった。
ああ、これは。
正直に話す。

「ええー!?」

いつもの夏海だ。

だから俺もいつのまにかいつも通りになっていた。普通すぎて、
─口が滑った。

「好きだからだろ!?」

また距離を感じる。

俺の前では素直でいろ。
好きな奴に気遣われるほど苦しいものはない。

言葉を選んで
「...絶対嫌いになったりしないから。」

さっきの距離を取り繕うように。

そうして駅につき、向かいのホームの夏海と笑い合うのは、なんだか《二人だけの特別》のような感じがして、少し嬉しかった。