終わったあと、瑛星は俯いていた私の肩をとんとんと叩いて、行こうか、と言った。

あれはニコロの人生で、私も同じように転がるとは限らない。

前回ならば2人で感想を言い合っていたが、今回はなんだか無言のまま、近くのカフェへ立ち寄った。

「どうだった?」

そういいながら、ティッシュを渡してきた。

どうやら泣いていたらしい。

おもいっきり鼻をかみ、瑛星が袖で涙を拭ってくれた。

「身分の差がなくて良かったよなぁ。」

なんとも薄っぺらな感想である。

しかし、顔面に冷水をぶっかけられたような感覚になった。

「夏海。」

真っ直ぐな目

「俺はお前が好きだ。でも、お前の心はどこにある?」

瑛星には、とっくに気づかれていた。

きっと、あたしが気づくよりも先に気づいていたんだ。

それでもあたしを受け入れてくれた。

胸が痛んだ。

「ごめん、瑛星!」

財布から2000円を取り出して、テーブルの上に置く。

瑛星の笑った顔が悲しすぎて、後ろ髪を引かれそうになるのを振り切って、その店を飛び出した。