すると、
「翔ちゃん、今日はありがとう。瑛星に翔ちゃんが運んでくれたって聞いた。」

言わなくていいって言ったのになぁ。

そう思いながら、それでもやはり“瑛星から聞いた”というフレーズに、まだ傷つく自分がいた。

頭を撫でるのも、もうダメなんだな。

いつもなら、なっちゃんが家に来ていたのに、それももうだめ。

寂しくて、寂しくて。

借り物のお題は『好きな人』だった。

なっちゃんに見られなくてよかったなぁ。

そう思っていると、
「翔ちゃん、借り物のお題何だったの?」

適当にはぐらかすか。

─本当のことを言うか。

悩んでいると、なっちゃんは不思議そうな顔で見つめてくる。

やっぱり、かわいい。

悩んでいたはずなのに、口が勝手に動いていた。

「好きな人ってお題だったんだよ。」

なっちゃんの見開いた目。

それから、困った顔。

慌てふためいて、思いついたかのように、

「あ、友だちとしてだよね!?一瞬びっくりしちゃった!」

「そうじゃなくて。」

もう、自分を自分でコントロールできない。

いつもの僕なら上手にかわしてみせるのに。

なっちゃんといると狂ってしまう。

でもここまできたら。

想いを伝えるだけなら。

この恋に、終止符を打とう。

「なっちゃん、好きだよ。」

なっちゃんの目を真っ直ぐに見つめて。

ああ、これで終わったな。

そう思ったのに。