正義の人

「課長、まだですか?」と小林友子から急かされてしまった。
「ごめん、オッケーだ。はい、どうぞ。」
そう言って私はカルトンに通帳を乗せて彼女に渡した。
「青木様、お待たせしました。」
彼女に呼ばれ、手元のスマートフォンを胸ポケットにしまい込むと、彼はゆっくりと立ち上がった。
「どうぞ、お名前と本日のご入金額をご確認下さい。」
彼女に促され、一応の確認をすると彼は一緒に添えられたポケットティッシュと通帳を手に取り、ズボンの後ろポケットに一緒にしまい込んだ。そして、そのまま出口に向かって歩き出した。
 彼が最後に残ったお客様となったため、一階にいた行員全員が「ありがとうございました。」と挨拶を行うと、ドアから外へ出る直前に顔を一瞬こちらへ向け、軽くお辞儀をした後、店を出て行った。
 最後のお辞儀が誰に向かってのものなのか、ノンフレーム眼鏡のレンズに反射した周囲の画像が邪魔をして私には判らなかっ