正義の人

 窓口の女性行員が、ノンフレーム眼鏡をかけた彼の受付番号を呼んだ時、時計は15時15分を指していた。先程の勇者である事に気づいた彼女は、カウンターに彼を迎えると「先程は、ありがとうございました。」と軽く会釈をしてお礼を述べた。
 彼女の名前は小林友子、先程クレーマーの攻撃を受けていたのは他ならぬ彼女であった。入行して3年目の25歳、肩までのショートカットでクリッと吊り上がった大きな目が特徴だ。社交性にも長けており、男性行員からの人気も高い。普段は資産運用アドバイザーという役割を担っているのだが、今日のように店頭が混み合っている時は窓口業務の手伝いをしてもらっている。そんな中、例のクレーマーを受付する事になってしまったという訳である。
 軽くお辞儀だけをして応えた彼に対して、彼女は「今日は、どういった御用件ですか。」と笑顔で尋ねた。
 彼の用件は新規口座の作成だった。中途採用が決まった勤め先から、給与振込の受け取り用に口座の作成を指示され、その手続きに来店したとの事だった。