正義の人

小柄なその人物は続けた。
「待っている人が大勢いるのに、そんな無理な主張の繰り返しで時間を取らないでもらえませんか。」
手元には、時間潰しに操作していたであろうスマートフォンを持っており、椅子に腰掛けたまま顔だけをクレーマーに向けている。
 まさかの後方からの攻撃に、周囲のお客のみならず、批判を受けたクレーマーも一瞬驚いた表情を見せ言葉を失った。
 気を取り直したクレーマーが、攻撃対象をその人物に切り替えるよりも早く、その男性客はさらに続けた。
「他人の資産を預かる銀行の善管注意義務、近年の本人確認の厳格化、印影での判別手法を取っている日本文化を踏まえたら、御自身の主張が通るわけがないというのは、お解りですよね。」
 クレーマーが「お前は関係ないだろ。」と反撃したが、直後に
「待たされて不必要に時間を失い、迷惑しています。」と再口撃をを受け、クレーマーは続ける言葉を失った。