それから私たちは、美味しい料理を口に運びながらホントに他愛ない話をした。

話すと言っても、要さんの素っ気ない感じは変わらないけど…まぁ、これは性格かな。

だけど、以前私に冷たく当たっていた人なのかと感じるくらい要さんが普通に話すものだから、何だか変な感じがした。



「……お前は、何でこの婚約を受けたんだ?」


コース料理も終盤にさしかかってきたところで、核心をついた質問が投げかけられた。

食事が始まってから、きっとお互いどこかでこの話題のことを気にしてた。



「それは、……」


私は手に持っていたフォークとナイフをテーブルに置いて、じっと彼を見つめた。



「もちろん、...家のためです。ウチが普通じゃないことは分かってたし、結婚だって自由に出来るとも思ってませんでしたから」



私の言葉に、怒った様子も軽蔑する様子も見せない要さん。

それは多分、彼も私と同じ立場にある人間だからだろう。



「...そうか」



そう呟いた要さん。

その姿が、何故だか少しいつもと違う感じがして違和感を感じた。



だけど、婚約の話はそれだけだった。

最後のデザートが運ばれてくるまでの間。

どこか様子の違う要さんのことが、私は気になって仕方なかった。