だけど、その願いはあっけなく打ち砕かれてしまった。

それは、1人大きな広間で食事をしている最中、大きな音を立てて中に入ってきた彼の顔見てすぐに分かった。



「要様!騒々しいですよ」



そんな彼を見るや否や、間島さんが慌てた様子で駆け寄ってきた。

私はビックリして手を止めたまま、彼に見入ってしまった。

間島さんが「要様」と呼んだのだから、彼が私の婚約者なんだ。



薄い茶色をしたサラサラの髪と、キリッとした鋭い瞳。

筋が通っていてスッとした鼻に薄めの唇をした顔立ちは、まさに眉目秀麗な容貌だった。

怖いくらいに整った顔は、気品溢れる異国の王子のような風格さえ漂っている。

思い描いていた婚約者の姿とは違う彼に、少し驚いた。




「オイ」



私をじっと睨みつける彼。

敵意を剥き出しにした、そんな表情で私を見ている。

全身に緊張が走り、体がギュッと硬直する。

聞こえた声には、冷たさしかなかった。