それは、あまりにも急な話だった。



「あの、間島さん。今、何て…」

広間で朝食を摂っている最中に言われた言葉を聞いて、思わず手も止まり、私は間島さんを見つめた。


「今朝、要様のお父様から連絡がありまして。夏休みに入ったら、一度2人で西園寺グループの本社があるニューヨークへ来るようにと」


空になったティーカップに紅茶を注ぐ間島さん。

だけど、私の手は相変わらず止まったまま動かなかった。


「要様は元々この夏休み期間中は、お父様について経営学を学ぶ予定でした。伽耶様をお呼びになったのは、一度ゆっくり話がしたいとのことだそうです」


そう言われ、自然と体が引き締まる。

余程私の顔が強張っていたのか、間島さんは目尻に皺を作って私に笑いかけてくれた。


「緊張されるでしょうが、とても素敵な方ですよ」


間島さんの穏やかな声。

それを聞いて私の肩の力も少しだけ解れた。


「そうですね。…楽しみにしてます」


私の返事を聞くと、間島さんは嬉しそうに笑った。

以前もこの屋敷を褒めた時に、間島さんが頬を緩ませていたことを思い出す。

きっと要さんのお父様、要さん、そしてこの屋敷を大事に思っているんだろう。

それがとても伝わってきた。



…そんな間島さんが言うくらいだ。

きっと要さんのお父様も素敵な人に違いない。



私は間島さんがお茶を淹れてくれたカップをじっと見つめながら、自分にそう言い聞かせた。