「…ありがとうございます!夏希ちゃんもありがとう」

「ううん!早く電話しといで」

「うん」

俺に向かって一礼した女は、名刺を握りしめて生徒会室を出ていった。

俺はそれを見届けると、パタンとファイルを閉じて机の上に置いた。


「さっすが会長!顔が広いのね」

ホッとしたのか、安心した様子で広げたファイルを片付け始めた東條。

「たまたま親父の付き添いで行ったパーティでもらった名刺を持ってただけだ」

俺がそう言うと、ニヤニヤとした東條が俺を見てくる。


「でも、会長って困ってる人はほっとけない質だよね」

「…うるせーよ」


俺はファイルをしまうと、両手をポケットにつっこんだ。

肘をついて俺を見る東條と目が合う。


「残ってるクラスの見回り行ってくる。東條は書類が片付いたら、帰れよ」

「はーい。会長も早く帰んなよ?毎日遅くまで残ってるってたもっちゃんから聞いたよ?」


「会長が潰れたらどーすんの」と続けて言う東條に俺はフッと笑うと、ドアの方に歩いていった。


「バーカ、俺を誰だと思ってんだ?そんくらいで潰れるかよ」


俺の言葉にハァーと深い溜息をつく。


「ハイハイ、天下の帝桜学園生徒会長様でした」


という東條の声を背にして、俺はドアノブに手をかけた。


とりあえずこれで食材の問題は解決するだろう。

名刺に書いてある会社は、品揃えが豊富で急な注文にも対応出来たはずだ。


「いってらっしゃーい」


気の抜けた声に「ああ」と返すと、俺は見回りを再開させる為、ココから少し離れた棟へと足を運んだ。