でも、結局それも叶わなかった。


久しぶりに顔を合わせて告げられたのは、婚約の話とはいえ、実質この屋敷から出ていけといった通告と変わらない。

「もういらない」そう言われた気分。




跡継ぎとしての役目を果たせない私は、こんな形でしか両親の期待に応えられないようだ。

だったら、答えはひとつしかない。




「...分かりました」




私を見ないままの両親から目を逸らし、そう小さく返事をした。


広間には、食事をする音だけが響いていた。

もう一度ちらりと両親を見てみるけど、無表情の2人はただ淡々と料理を口に運ぶだけ。

娘の事なんて何とも思ってない、そんな態度はいつものことだった。

関心がないのだ、2人には。

たった1人の娘が結婚しようとも、彼らがいつも考えているのはこの家の繁栄と存続でしかないのだから。



こうして婚約の話はあっけなく終わってしまい、私は今日限りでこの家を出ていくことが決まった。