「これでいいの?」


彼女がいる花壇の側までやってきた私は、花に隠れたピンクのハンカチを拾って彼女に渡した。



「うん!これ、これ!ずっと探してたから見つかってよかった〜」


嬉しそうにギュッとハンカチを握りしめた彼女は、私の手を取ってブンブンと大きく振る。


「ホントありがとう!」


と白い歯を見せて笑う彼女の笑顔は、太陽みたいに眩しかった。



「私、3-Cの東條 夏希(とうじょう なつき)!あなたも3年だよね?」


彼女はそう言いながら、私の靴を見る。

帝桜は学年によって、スリッパの差し色が違うから誰が何年生かすぐに分かるのだ。


「E組の藤島伽耶、です」


「かや?すっごい可愛い名前!ね、伽耶って呼んでもいい?アタシの事も夏希でいいから」


「う、うん…」


初対面にも関わらず、気さくに話しかけてくる彼女にちょっと圧倒される。



「じゃあ、夏希ちゃんって呼ぶね」


「いいよ〜!」


元気に頷くと、夏希ちゃんは手元のハンカチを丁寧に畳んでポケットにしまった。


「午後から雨だし、早めに見つけたかったんだ。いつもあそこにいるの?」


「ううん、たまに。ココから見える花壇の花が綺麗だな、って思って」



私がそう言うと、夏希ちゃんはまた目を輝かせてパァと花が咲くように笑った。