「...と、ここで話を終わってもいいが、最後に俺から卒業生、そして在校生にこの言葉を贈る」



さっきの畏まった言葉ではなく、それはいつも彼が壇上で話す時と同じ口調だった。

いつもの要さんの姿に、みんなは嬉しそうな顔をしていた。

そしてこれから何を話すかを、ワクワクしたような目で見つめていた。



「これから先、進む道はそれぞれ変わっていく。その時に壁にぶち当たることもあるだろう。もう立ち直れない、そんな経験をすることもあるだろう」



スピーチ台に手をつき、前のめりになって話す要さん。



「でも、どんな時も諦めるな。どんな状況だって、自分の心がけ次第で変わる。しっかり前を向いて歩いていれば、道は必ず開くはずだ」



そう言ってみんなを見つめる彼の胸元には、色とりどりの花に交じった白いガーベラの花。



「この3年間。ココで過ごした毎日は、とても有意義だった。お前らと過ごせて本当に楽しかった」



その瞬間、周りからすすり泣く声があちこちから聞こえてくる。

頬を伝う涙。

それは私も一緒だった。



いろんなことを学べた1年で、いろんな人の温かさを知った1年。

たった1年しかこの学園にいなかったけれど、この1年が一番楽しかった。




「俺は、この帝桜学園の生徒であることを誇りに思う」



きっと、この学園にいる全員がそう思ってる。

そしてそう思えたのは、紛れもなく要さんのお陰だ。



彼と出会えてよかった。

今日改めて、私はそう思った。



「ココにいる生徒全員がその誇りを胸に、明日からまた頑張ってくれることを俺は願ってる」



「以上」と締めくくられた挨拶の後、要さんが一礼する。

割れんばかりの拍手が会場を包み、立ち上がった生徒たちは口々に「ありがとう」と泣いていた。