要さんの半歩ほど後ろを歩きながら、パーク内に咲き誇る色とりどりの花を眺めた。

気候もよく、照らす太陽の日差しがいつもより暖かで、とても気持ちいい。


要さんと私の間に、あまり会話はなかった。

ただ時折花の名前を聞かれたり、学校のことを話したり。

私はそれに返しながら、ずっと要さんの背中を見つめていた。



本当に楽しかった。

本当に嬉しかった。

要さんとのこの時間が、そして彼の気遣いが。



出会いは、最悪だった私たち。

政略結婚の相手として屋敷に来た私に、要さんは冷たい視線を送り、高圧的な態度で私を拒んだ。

そんな彼に反抗するように、私だって親の決めた相手となんか結婚したくない。

そう思って毎日を過ごしていた。



だけど、帝桜祭で初めて触れた優しさ。

ニューヨークの夜に見せた覚悟に、私の気持ちは変化していった。

今ではそんな彼に心惹かれ、『好き』……その想いがこんなにも大きくなってしまった。



「伽耶」


前を歩いていた要さんが立ち止まり、振り返る。


「ほら、ガーベラだぞ」


そう言って私を見つめる要さんを見て、微笑んだ。



ありがとう。

あなたと出会えてよかった。

今は心からそう思う。



私は「ホントですね」と彼に近寄り、咲き誇るガーベラの花に手を伸ばした。

ガーベラは、優しく微笑んでいるように仲良く並んでいた。

それはとても愛らしく、とてもいじらしかった。