夏希ちゃんと彼女の話を聞いてから、悶々としたものを抱えて過ごす日々。

そのモヤモヤは晴れることなく、むしろ日を追って立ちこめるものが増えたような、そんな感じだった。

要さんと過ごす時間は変わらないけど、彼女の事を思い出しては、1人気分が沈んでしまう...そんな日が続いていた。



そして、要さんの誕生日パーティを明日に控えた今日。

広間で朝食を摂っている最中に外をちらりと見遣った要さんが、私に今日の予定を聞いてきた。



「今日、ですか?特に何も予定はありませんけど...」


ナフキンで口元を拭いながら答えると、要さんは「...そうか」と小さく呟いた。


そして再度私を見る。



「じゃあ、今日は俺に付き合えよ」


突然言われたそんな言葉に、私の手は止まってしまった。

こんな事言うのは初めてだったし、何より要さんに付き合ってどこへ行くのか。


「え、あっ...ハイ。いいですけど、どこへ行くんですか?」


私がそう尋ねると、要さんは席を立つ。


「行けば分かる」


そう言ってドアに向かう要さんは、間島さんに「車の用意を」と頼んだ後、「9時には出るから支度しとけよ」と言って広間を出ていった。

残された私は、ポカンとした顔で閉まったドアを見つめていた。



「初デートじゃありませんか?」


私の隣に来た三上さんが、何故だか嬉しそうにそう言ってきた。

『初デート』という単語に顔が赤くなるのを感じた私は、慌てて彼女の言葉を否定した。


「デートだなんて!...ただの同伴ですよ」


きっと明日のパーティに要るものでも買いに行くのかも。

2人揃って出席するから、スーツやドレスも合うものにしないといけないし。



そんな理由を考える私を、三上さんはクスクス笑って見つめていた。