温もりを抱きしめて【完】

「要さん……」


階上の踊り場から私を見つめる要さんは、何を考えているか分からない表情をしていた。

ただじっと何かを考えるように私を見つめる瞳は、正直居心地がよくなかった。


「……三上は持ち場に戻れ」


暫くの沈黙の後。

私を部屋まで送ろうとしていた三上さんに、そう指示を出す要さん。


「はい、承知しました」


三上さんは、西園寺家の優秀な使用人の1人だ。

その場の空気を読んで、自分がどう振る舞えばいいかをわきまえている。


三上さんは私に「失礼します」と言うと、一礼して広間の方へと行ってしまった。

その様子を見た間島さんと二宮さんも、私達に一礼してその場を立ち去った。


残された私は、再度階上の要さんを見上げる。



「……部屋で話がしたい。いいか?」



要さんの声が、玄関のホールに静かに響く。

この頃要さんを避けていた私は、その言葉に不安を覚えた。

出来れば、要さんと2人きりにはなりたくなかった。

こんな日だからこそ、余計に。



「はい、いいですよ」


だけど、だからと言ってその申し出を断ることも出来ない。

私は何でもない風を装って、要さんの言葉に作り笑いを貼り付けてそう答えた。