温もりを抱きしめて【完】

「きゃ……んんっ!」



何の音かも確認する暇もない内に、急に後ろから誰かに羽交い締めにされ、口も押さえられて体の動きを封じられた。

突然のことに、頭は混乱状態。

力強いその手に私の体は強ばり、身動きが取れない。

見えない相手に、一瞬で恐怖感でいっぱいになった。



「んんっ…ん、……っ!」



ぐいぐいと締め付けてくる手から逃れようと、必死に体を動かした。


「騒ぐなよ。大人しくしてればすぐに済む」


耳元で聞こえた男の声に体は震え上がり、さっきよりも強い力で抵抗した。

これから起こるかもしれない事態を考えれば、暴れてでもココから逃げださなくちゃ!


「ん!んんっ!」


無我夢中で体を動かした。

咄嗟に私の口を塞ぐ男の手を思い切り噛んだ。



「いってぇ!」

「誰か助けて!」


男の手が緩まった隙に、持っていたカバンを振り回して男と距離を取る。

男は小太りの中年っぽい容姿で、その異様な目つきに寒気がした。


こちらに近づこうとする男から逃げるように走り、私は何度も大声で助けを求めた。


「誰か、助けてください!」

「こら、待て!」


だけど、足がもつれて上手く走れずに転けてしまった。

男は馬乗りになって私の腕を掴み、また口を塞いだ。

目尻からは涙が溢れ、それが頬にいく筋も伝う。


「んんっ!んー!」


それでも諦めずに抵抗を続け、男から逃げようと試みた。

そんな時だった。



「こっちよ!早く!」

「おい!何してんだ⁈」


女の人と男の人の声が聞こえた。

すると、私の腕を掴んでいた男は慌ててそこから退き、公園の出口の方へ走り出した。


「こら!待て!」

その男の後ろ姿を助けに来てくれた男性が追いかけて、側にいた女性は私の元へ駆け寄ってきてくれた。


「大丈夫だった?怪我はない?」


宥めるようなその声に安堵した私は、そこで意識を失った。