夕方になり、黄色の小花が散るサンドレスに着替えた私は、三上さんと一緒にテラスへ向かった。

テラスにはすでに要さんの姿があり、イスに座って間島さんと話していた。


「お待たせしました」


私も彼の隣に腰かけると、要さんがこちらを見る。


「明日の夜に親父の取引先のパーティがこの近くであるらしいんだが出れるか?」


さっき間島さんと話してたのは、この事なのかな。


「ハイ」

「じゃあ、間島。出席って返しといてくれ」

「畏まりました」


間島さんはそう言うと、一礼して部屋に戻っていった。


こんな事もあるだろうと思って、三上さんはドレスも荷物に入れとくように言ってたのか。

その三上さんも間島さんの後に続き、部屋の中へと行ってしまったので要さんと2人きりになる。


「自然に囲まれて気持ちいい所ですね」

「そうだな…」


9月の中旬にも関わらず、ココは吹く風もどこが冷たさがあって涼しい。

広大な庭が広がる西園寺家の別荘は、見渡す限りの緑で他には何も見えない。

ふと隣に座る要さんを見ると、何だか元気がないようにも思えた。


そんな要さんに元気になって欲しい、と思った私はココへ着いてから見つけたテニスコートの事を思い出した。

そう言えば、三上さんが『要様はココでよくテニスをされてますよ』と言っていた。


「要さん、テニスもされるんですよね?」

「まぁ、気分転換に打つ程度だけどな」

「じゃあ、明日一緒にやりませんか?」


私の誘いに、要さんは驚いているようだった。

意外、という顔で私を見る。


「な、何ですか⁈私だってテニスくらい出来ますよ!」


私が慌ててそう言うと、目を見開いた要さんはその後ククッと笑い始めた。


「いや、日焼けを気にすると思っただけでテニスの腕を疑った訳じゃなかったんだが」


それを聞いた「いや、あの」と慌てふためいた。


恥ずかしかったけど、何かおもしろかったのかククッと笑い続ける要さんを見たら「まぁいいか」と思えた。