温もりを抱きしめて【完】

夏希ちゃんはチラリと私の顔を見て目を見開くと、コツコツとリーダー格の女の子の前まで歩いていった。

その目に怒りが込められているのは、誰が見ても明白だ。


「アンタ水織の次は、伽耶にちょっかいかける訳?」

「うるさいわね!アンタに関係ないでしょ!」


リーダー格の女の子は今にも掴みかかりそうな勢いで、夏希ちゃんに詰め寄る。

それを少しオドオドした様子で、他の女の子が見つめていた。

私は突然の夏希ちゃんの登場に驚いて、足が止まってしまっていた。


「関係大アリよ!伽耶はウチの部員なんだから」


夏希ちゃんの言葉に、私の心はギュッと掴まれる。


「…それに私の親友よ」


静かに、そう言った夏希ちゃん。

あんな事があったのに、そう思ってくれるんだと思うと、胸が熱くなった。


「今度伽耶にちょっかいかけたら、私が許さないから」



夏希ちゃんは、彼女たちを睨みつけたままそう言った。

するとリーダー格の女の子は、フンと鼻を鳴らして背を向けた。


「行こう」


彼女の後を追って、他の子たちも慌てて出て行く。

教室には、夏希ちゃんと私。

はぁと深い溜息をついた夏希ちゃんは、くるりと振り返って私を見た。



「……大丈夫だった?」

さっきのキリッとした表情とは違って、眉をへの字にさせてこちらを見る夏希ちゃん。

懐かしく感じる夏希ちゃんの声を聞いて、思わず私は彼女の側に駆け寄った。

一瞬驚いた顔をした夏希ちゃんだったけど、両手を広げて私を見るから、迷わずその腕に飛び込む。



ギュッと抱きしめられて感じる温もりに、私は不意に泣きそうになった。