SHRが終わり、1限目は全校集会。

体育館に全校生徒が集まり、校長先生や風紀指導の先生の話を聞く。


冷暖房完備の体育館は、外がどれだけ暑くても快適だ。

周りを見ると、みんな涼しげな顔をして先生の話に耳を傾けている。

壇上で話す先生の言葉を片隅で聞きながら、私はふと生徒会メンバーが並んでいる方を見た。



壇上に一番近いところに要さん。

そして、その隣には夏希ちゃんがいる。

2人とも背筋を伸ばして、凛とした姿で立っていた。



要さんとは、朝食の時に顔を合わせた。

ニューヨークから帰ってきて以来、食事は一緒に摂るようになった私たち。

あまり会話はないけれど、それでも空席だった場所に彼が座っているだけでいつもと違う気持ちになれた。



要さんとの関係は、改善された。

問題は、夏希ちゃんだ。



夏希ちゃんとは、婚約の話をしてから初めて会った。

いつもと変わりない姿に、あの日のことはなかったかのように錯覚してしまいそうだ。

声をかければ、明るい笑顔で私を出迎えてくれる...そんな夏希ちゃんが思い浮かぶ。


マイクの前に立ち、司会を始めた夏希ちゃん。

ハキハキと、堂々と喋る彼女は、やっぱりいつもと変わらない。

私はそんな夏希ちゃんを見ながら、ギュッと掌を握り締めた。




『どんな状況だって、自分の心がけ次第で変わる』


いつかの集会で、要さんが言っていた言葉。

それがふと頭を過ぎった。



―――テストが終わったら、もう1度話そう。



このままで、いたくない。

神谷くんの『大丈夫』を信じて。

ちゃんと自分の気持ちを伝えて、夏希ちゃんと仲直りがしたかった。