「なるほど、な...」



神谷くんはそう言って、頬杖をついた。


夏希ちゃんとは部が出来た当初からの友達で、少なからず私よりも付き合いの長い彼の返事が気になった。




「婚約には理由があったんだろ?」


「、うん」


「その婚約者と、東條の友達の仲を無理やり裂こうとも思ってなかった?」


「もちろん!」



私がそう言うと、神谷くんは体を起こして私を見た。




「だったら、大丈夫だ」




キッパリとそう言い切った神谷くん。

その言葉に、なぜか安心が出来た。



「そう、かな?」


「あぁ。誤解はいずれ解けるさ」




眼鏡の奥に見える瞳を少し和らげて、私を見る神谷くん。

厳しそうな彼だったけど、こうして相談に乗ってくれる優しい一面もあるんだ。




「時間はかかっても、諦めないこと。...きっと東條は、藤島のこと嫌いになんてならないから」


「...うん」



神谷くんにそう言われると、どこか説得力があった。

私は「ありがとう」とお礼を言って、立ち上がる。



もう少し落ち着いたら、夏希ちゃんときちんと話してみよう。



そう思った。


「神谷くん、私諦めない」


私がそう言うと、少し笑って彼は「…あぁ」と返してくれた。



時間がかかってもいい。

私の世界を広げてくれた夏希ちゃんは、私にとって大事な友達だから。

一度仲違いしたくらいで、離れたくなかった。