「...ケンカでもしたのか?」


神谷くんの言葉に、「...うん」と私は返した。

それを聞いて彼は持っていたスコップを花壇の縁に置いて、日陰のある場所に座った。

そして、ポンポンと自分の横を叩くと「座れよ」と私に言ってきた。



「話くらい聞いてやる」



そんな彼の言葉に甘えて、私は隣に腰を下ろした。

早朝とはいえ、日差しがきつく、日なたにいれば汗ばむくらい暑かった。

グランドの方からは、運動部の元気な掛け声が遠くで聞こえる。




「...私、夏希ちゃんの大事な友達の彼氏と婚約することになったの」



神谷くんは、私がそう言っても特に表情は変えなかった。

ただ静かに、私の話を聞いてくれた。



「夏希ちゃんが怒るのも無理ないと思う。嫌われたって仕方ないって思ってる。だけど、やっぱり...この学校で初めて出来た友達だったからホントはこんな風になりたくなかった」



ニューヨークのあの夜。

「ついてきて欲しい」と言った要さんの決意に、私の心は動かされた。

その時どこかで考えていたこの結果を、私は受け入れたはずだったのに。

いざその現実を目の当たりにすると、ショックを隠せなかった。