広間から離れて、テラスに来た私たち。

要さんは飲み物を取りに会場へと戻ってしまい、私は手すりに頬杖をついてたくさんの星が瞬く夜空を眺めていた。


気温の高い日中とは違って、夜は涼しい。

頬を撫でる風は少し生暖かかったけど、よく効いた冷房の中にいた私にとっては丁度いいくらいだった。



掴まれた手をぼーっと見つめる。

まだ熱を帯びているような、そんな感覚が残っている。



「疲れたか?」


後ろから聞こえた要さんの声に、くるりと振り向いた。

彼の両手には、水が入ったグラス。


「……少し」


私の返事を聞くと、要さんは「ほら」と手に持っていたグラスを渡してくれた。


「ありがとうございます」


要さんはそのまま手すりに背を預けて、私の隣に並んだ。

私は受け取ったグラスに口をつけ、ほのかにレモンの香りがする水を、渇いていた喉に流し込む。



「……随分長いこと捕まってたな、さっきの女に」

「坂口さんですか?……まぁ、私に話したいことがたくさんあったみたいで」


少し苦笑いでそう言うと、要さんは「そうか…」と小さく呟いて、手すりの上にコトンとグラスを置いた。


「俺の周りには昔からあんな女が多かった。ウチの権力と財産に目がない、そんな奴ばっかだ」


私はグラスを握ったまま、彼の話に耳を傾けていた。


「……お前がウチに来た時も、正直そんな女と一緒だと思った」


前を向いていた要さんが、こちらを見る。

その目に捉えられた瞬間、急に体が固まったかのように、動けなくなってしまう。