地面が揺れていた。地震のようなそれより、死を迎え入れ、世界を変えようとしている。
白を赤色が染めていく。ああ、何故。私は繰り返す。
死なないで、といいたかった。しかしそれをいってしまったら、彼はどうなる。自分の手まで汚し、悪神と呼ばれてまで動いた彼や、彼らは。
大きく、揺れていた。
建物が地震がきたかのように揺れ、柱や美しい彫刻にひびをいれる。
あの鏡にいる美しい者は「始まるぞ」といった。
「―――世界は再び命を吹き返す」
柱が崩れ、大きな音をたてた。鏡にも亀裂が走っている。ここは崩れてしまうのだろうか。
母は地上に生きる者だった。父は神ではあったが天上を去り、母とももに暮らした。大好きな人たち。彼らがいなくなってからは、私は一人だった。ひとりぼっちだった。
知らないで、貴方を悪神だと。
知らないで、貴方は殺すと。
「エニンルド様」
揺れは酷くなっていた。目眩がする。立つことなどできない。鏡は割れて、その破片を散らした。
名前を呼んでも、もう返してはくれない。最期まで、酷い人。
私は死ぬのだろうか。
熱を失っていくエニンルドはもう、なにも言わない。私がどれだけの思いを抱えているのかを、彼は知らない。そう。知らないまま、彼は一人いってしまった。
その美しい顔に、私は触れる。そして、二度目の口づけをした。
「エニンルド様。私―――」
ただ。
もし、平和だったなら。
私は―――――。


