元々、エニンルドは力のある神だったのだ。そんな神が悪神もなれば、命は稲穂を刈り取るように奪っていく。
本当なのですか。
床に倒れ、血に染まるエニンルドに問う。エニンルドはこちらを見て、困った顔をした。それはずいぶん天上に住まう神らしくない、人らしいものだった。
「私はお前を愛していた。しかし来るべきものは来る。世界の崩壊に愛する者と死ぬのもまた一興だったが――――多くが世界のやり直しを受け入れるそれを、私は拒ぶことにした。驚くことに私に協力するものも出て、どうにか間に合ったな」
なら、私に会いに来ていたあの時の優しげな顔は本物だったのか。
――――知らなかった。
私が刺した短剣は、彼の命を奪っていく。
「何故です!そうしたら貴方は」
「お前はこの世界を愛していたからだ」
短剣を引き抜いた。高い音が響き、ああ血が流れる。
私は、なんということをしたのだろう。
私は知らなかった。そんなことが背景にあっただなんて、知らなかった。
知らないというのはなんと罪なことなのだろう。私は傷口に手を翳そうとした。だがそれをエニンルドは止めた。
彼は、死ぬつもりだったのだ。
最初から、ずっと。
「お前が愛していたから、私は滅ぼされてたまるかと思った。守られた世界は新たに生まれ変わるだろう。お前が生きやすい世界に。緑は溢れ、子供たちの笑顔が溢れる、そんな…世界に」


