『地上に生きるものを殺し、殺されればお前たちの勝ちで、私は死ぬ。そんな盟約だったな』
「待って……待って!どういうこと?貴方は、悪神で」
『世界は岐路に立たされたのだよ。創造主が用意した岐路に』
「岐路…?」
鏡にうつる、美しい者の表情には何も浮かんでいない。ただ、創造主のためにだけ思いが顔に出る。思い出しているのか目を閉じ、『創造主は』と続ける。
『我らの未来を案じていた。身を隠す前、私を創り、見極めを命じたのだ。滅ぼすべきか、今まで通り見守るかを委ねると―――私は来たる岐路まで見ていた。いくつ国が生まれただろう。そしていくつ滅んだだろう。天上でさえ同じようなものだった』
創造主、だなんて大きすぎて想像がつかない。
だがこの鏡にいる者は、そんな創造主が生み出した者だという。恐ろしいと思うのは仕方ない。
『古い盟約は、世界を滅ぼされたくなければ神の手で断罪せよ。そしてお前が愛する者に殺されよ。さすれば私は役目を終え、世界は再び命を吹き返す―――理解せぬ者らや恐怖を抱いた者は己を案じて身を隠した。勇気ありし者らは悪神と呼ばれ心を殺してでも世界を守ることを選んだのだよ』
つまり、だ。
「悪神というのは、行動だけを見て呼ばれたと……?」
天上に生きるものも、地上に生きるものも、共に共存して生きてきた。語らい、笑い、悲しみ、怒り。互いに愛していた、はずだった。なのに一部の神は突如牙を剥いた。訳もわからず、人々は恐れた。
全ては、世界の崩壊を防ぐために。
世界が崩壊してしまったら、すべてが無くなってしまう。だからこその行動であった。
私に会いに来るエニンルドは、驚くほど穏やかだった。人の首を刎ねるような人には思えなかった。けれど彼は多くを殺す神というのは事実だった。私も多くの人々同様に恐れた。


