「はあ? 馬鹿かお前、んな暇あったら一社でも多く受けろよ。一日でも早く就職先決めて、亜衣を安心させてやれよ。それまでは、こっち帰ってくるなよ」

 一浪して亜衣と同じ大学に入った悠はまだ学生で、就カツ中だ。
 数年前に比べると求人率が上がってきて、就職しやすくなっているご時世に、まだ一社も内定が取れていない馬鹿が、子作りだけ先駆けしやがって。

 そんな計画性のない馬鹿、企業だって採らない。亜衣と籍を入れるのは、就職が決まって働き出してからということで、今はとにかく何が何でも就職を決めろと皆が口を酸っぱくして言ってるのに。

「なにが、『初恋の人に会う』だ。浮かれてんじゃねえぞ、クズ」

「わ、アキト酷い。クズってのは、さすがに言いすぎなんじゃねえの? 悠ちゃん、心臓にズキっときたんだけど。もう駄目、持病がががが。死ぬ」

「死ねばいいのにって思うけどな。お前がこさえたガキへの責任、お前しか取れねえだろうが。取れよ、マジで」

「取る取る。その話はもう、いっぱい怒られたじゃん。てかそれとはまた別で。十年前からの約束をさあ、その日にしか果たせないのに、ブチるってどうなのよ。りのちゃんには責任ないわけじゃん。俺の都合で約束破るのってさあ。それが気になって気になって、就カツに身が入らないかもしんないし」