先に雑炊を食べ終わった相良さんが、熱いお茶を淹れてくれながら、ぽつぽつと語ってくれた。

「あいつのこと、結局俺も放っておけないし。悠さ、中三んとき再手術したんだよ。今度こそ死ぬかもしれないからって、俺に遺言残してさ。『もし俺が死んだら、初恋の女の子との約束を代わりに果たしてほしい』って。その約束を果たすために、お前は絶対死ぬなよって。生きろって」

 そう言った市原さんは無事再手術に成功し、今ではスポーツも出来るほど健康体らしい。

「まあ結局は、違う理由で俺が代行することになったわけだけど。約束した女の子が本当に来るのか、半信半疑でさ。そしたら本当に来て、想像と違ってて。そしたら、そっちも代理だったってオチ。良く出来てるよね」

 自嘲気味に笑う相良さん。私が姉本人じゃないと知って、明らかにがっかりしていた様子を思い出す。
 相良さんは、姉に何を期待していたんだろう。


“僕がこうして生きてるのは、利乃ちゃんのお陰だから”

“お前は絶対死ぬなよって。生きろって”


「……相良さん、もしかして死んじゃうかもしれなかったんですか?」

「え?……いや、全然」

 驚いた顔をしたあと、相良さんは微笑んだ。

「ああごめん、シリアスな話に聞こえた? 大丈夫だよ、俺は。図太いから」