「好きです……純恋先輩。」



本当に小さな声だった。



先輩は一瞬ピクリと反応したようにも見えたけど。


聞こえなかったのか、そのまま振り返らず家に入って行った。



おれはその場に立ち尽くす。



「あー……くそ。反則だろ、こんなの……。」



先輩は帰ってしまったというのに。


まだ首もとにあるシルバーのネックレス。



指で遊ぶかのように、チェーンに指を掛ける。



「後輩だからって、油断してんの……?」



おれが年下だから?

おれがホモだから?


先輩は年上だから?

先輩は女だから?



純恋先輩、おれは





年下の前に、ホモとかいう以前に



「〝男ですよ、分かってるんですか〟。」





ドアの向こう側

ドアを背にして、純恋先輩が顔を真っ赤にさせ座り込んでること


おれは知らない。