カレー店を出た瞬間、伊地知くんはまた私の右手を繋いできた。

「伊地知くん、いつまで手を繋いでるの?」

そう聞いた私に、
「千沙さん、家に到着するまでがデートですよ」

伊地知くんが答えた。

「もう」

何気に偉そうな顔をして答えるな。

心の中でツッコミを入れた私だけど、本当はこの手を離したくないと思った。

「ねえ」

私は伊地知くんに話しかけた。

「少しだけ、遠回りをしない?」

彼にそう言ったのは、もう少しだけ手を繋いでいたいからだ。

遠回りをすれば、その分の時間だけ長くなる。

「いいですよ」

伊地知くんは嬉しそうに答えた。