「要は、伊地知くんがキューピッド役なの?」

そう聞いた私に、
「そうなりますかね」

伊地知くんは微笑んだ。

「いいね、そう言うの」

お酒のせいなのか、私の口から本心がこぼれた。

小さな声で呟いたつもりだったのに、
「千沙さんは恋をしないんですか?」

聞こえたと言うように、伊地知くんが言った。

「私は…しばらくは、いいかなって。

追われているって言うくらい、仕事が忙しいの」

私は言った。

仕事は言い訳にしか過ぎない。

本当は…初めての恋を忘れることができないからだ。