Bartender

あんなことがあったせいで、最後は映画どころではなくなってしまった。

エンドロールが流れたのと同時に、それまで握られていた私の右手が離れた。

私の右手はデブ男の手汗のせいでベッチャベチャになってしまっていた。

デブ男は椅子から腰をあげると、出口の方に足を向かわせた。

「千沙さん、行きましょう」

伊地知くんが小声でそう声をかけてきたので、私は椅子から腰をあげた。

吐き気はまだ胸の中に残っている。

出口へ向かって歩いた伊地知くんの後を追うように、私もそちらの方へと足を向かわせた。

シアターを出ると、
「おい」

伊地知くんがデブ男に声をかけた。

「何すか?」

声をかけられたデブ男は訳がわからないと言う顔で、伊地知くんに視線を向けた。