Bartender

「別れよう、正文。

5年間楽しかった。

ありがとう」

そう言った私に、
「ごめんな、千沙…」

震える声で、正文は謝った。

この日、私たちは関係を終わらせた。

「――これでいいのだ」

正文が帰っていなくなったリビングで、私はどこかのマンガの登場人物の名ゼリフを呟いた。

正文が子供の頃に好きで読んでいたマンガだ。

「5年、か…」

長かったような、短かったような時間だ。

もうそろそろ結婚かなと思っていた矢先に、恋人から別れを切り出された。

理由は、結婚だ。

結婚をするから別れて欲しいと、言われた。

「おかしな理由だ…」

そう呟いた私だったけど、不思議と涙は流れなかった。