着替えが終わったのか、伊地知くんはその場を後にした。

バタンと、玄関のドアを閉める音が聞こえた。

その音が止むと、パタンと私はベッドのうえで横になった。

――恋愛に向いていないと言うのも、建前だ。

本当は、初めての恋を忘れることができないだけ。

20歳を過ぎた頃に訪れた遅い初恋に縛られているだけ。

仕事を理由に逃げて、向いていないと言い訳に出して、初めての恋を忘れることができないと言う事実を隠している。

「――もう2度と、恋なんてしないんだから…」

そう呟いた後、私は目を閉じた。

気のせいだろうか?

シーツには、伊地知くんの残り香が染みついていた。