純粋なその瞳に、一瞬だけど飲み込まれてしまいそうになる。

だけど、
「――断るわ」

私は言った。

「どうしてですか?」

伊地知くんが驚いたと言うように聞いてきた。

「昨日は仕事が忙しいとかってテキトーなことを言っていたけど、あれは本当は建前にしか過ぎないの。

本当は、私に恋愛は向いていないの。

私は仕事をしている方が向いているのよ」

「だけど、千沙さん…」

「もう何も言わないでちょうだい」

黒いビー玉の瞳から逃げるように、私は伊地知くんに背中を向けた。

伊地知くんがやれやれと言うように息を吐いたのがわかった。

衣服の擦れあうところが聞こえたところを見ると、服を身につけているのだと言うことがわかった。